横浜地方裁判所 昭和55年(行ウ)9号 判決
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【判旨】
一請求原因1の事実<編注・原告の預金に対する差押>は当事者間に争いがない。
二原告は、本件建物を昭和五二年二月一四日に取得したのであるから、本件建物についての昭和五二年度の固定資産税を賦課されるいわれはない旨主張するので、まず、この点につき検討する。
1 原告が昭和五一年一二月六日に本件建物について建物の表示に関する登記の申請を行つたこと、同月一六日付で原告が本件建物の建物登記簿の表題部に所有者として登記されたことは、いずれも当事者間に争いがない。
2 固定資産税の納税義務者は、賦課期日(当該年度の初日の属する年の一月一日)現在における固定資産の所有者であるとされる(地方税法三四三条一項、三五九条)。そして、右にいう所有者とは、家屋については、建物登記簿又は家屋補充課税台帳に所有者(区分所有に係る家屋については、当該家屋に係る建物の区分所有等に関する法律二条二項の区分所有者)として登記又は登録されている者をいうとされている(地方税法三四三条二項)。ところで、建物の表示に関する登記においては、建物の状況のほか所有権の登記のない建物については、所有者の氏名、住所を登記するものとされ(不動産登記法九一条一項)、また、所有権の登記をしたときは登記用紙中の表題部に記載した所有者の表示を朱抹することを要するものとされている(同法一〇三条)。したがつて、建物登記簿には、表題部又は甲区事項欄のいずれかに必ず所有者の氏名が登記されているわけであり、この所有者として登記されている者が固定資産税の納税義務者となるわけである。
以上のことは、市街化区域内に所在する家屋に対して賦課される都市計画税についても全く同様である(地方税法七〇二条、同条の五)。
3 原告のこの点に関する主張は、要するに、本件建物について原告は賦課期日当時建物登記簿に所有者として記載はされていたが、甲第一号証(ヴェルドミール磯子売買契約証書)を援用し真実の所有者ではなかつたのであるから、その年度の固定資産税及び都市計画税を賦課される理由はないというものである。
確かに、固定資産税及び都市計画税の納税義務者の確定に当つて、地方税法が前記のとおりいわゆる台帳課税主義を採用した結果として、賦課期日現在において建物登記簿に所有者として登記されている者は、真実は所有権を有しない場合であつても固定資産税及び都市計画税を賦課されることとなる。しかしながら、右のような地方税法がいわゆる台帳課税主義を採用したのは、不動産についてその真実の所有者を判定するのは必ずしも容易ではないこと、一律大量処理を要求され、かつ、窮極的には司法判断に属する不動産の権利帰属の判定をするに適しない行政庁に登記簿の記載と異なる認定を許容するのは妥当ではないことなどの考慮に基づく課税技術上の要請によるものであり、更に、登記簿の記載によつて固定資産税及び都市計画税を納付した真実の所有者ではない者は、真実の所有者に対し不当利得として納付税額に相当する金員の返還を請求することができると解され、前掲甲第一号証によれば、原告は本件建物の売主大木興産株式会社に対し納付税額相当の金員の返還を請求しえないものではない。これらの点にかんがみれば、地方税法がいわゆる台帳課税主義を採用したことをもつて、著しく合理性に欠け、あるいは同法三四三条一項の規定するいわゆる所有者課税の原則と矛盾するものであるということはできない。したがつて、前記の地方税法の規定を無効ということはできない。
4 以上のとおりであるから、前記1の当事者間に争いのない事実に基づいて、本件建物についての昭和五二年度の固定資産税及び都市計画税の納税義務者を原告と認定した本件課税は適法であり、この点に関する原告の主張は失当である。
(小川正澄 志田洋 清水節)